受託製造・受託合成事例のご紹介
事例3:大手医薬品メーカー C社さま
製造品:原薬
豊富な知見をもとに、
失われた晶析ノウハウを突き止め、必要品を確保
医薬品を製造しているC社様ではかつて、ある原薬を外部メーカーに製造委託していましたが、製品ラインアップの変更によってニーズがなくなり、長らく製造自体を取りやめていました。その後、別の製品で再び当該原薬を使用することになり、再度製造を外部委託することを検討、今度は当社にお問い合わせをいただきました。
当社では、C社様から情報提供を受けて当該原薬とその晶析プロセスを検討、下記のような課題があることを認識しました。
・結晶はその形によって溶解性・バイオアベイラビリティー・安定性が異なるため、医薬品の場合は薬効の変化につながる。今回の目的物は準安定型結晶*であるため、安定系結晶の析出・転移を絶対に阻止する必要がある *同じ条件下(溶媒・温度等)で、融点が高く、溶解度の小さいものが安定形結晶、それよりも融点が低く、溶解度の大きいものが準安定形結晶。一般に、準安定形は安定形へ転移しやすく、不安定である
医薬品用原薬の製造研究で
実績が豊富で、結晶多形の制御が得意
溶媒組成や冷却温度、攪拌数など、準安定型結晶を得るために必要な操作条件を念入りに検討の上で処方決定しましたが、試作において安定系結晶が1~3%程度混入するトラブルが発生。混入しないことを絶対条件としていたので、品質不合格となってしまいました。当社技術者とC社担当者さまとで再度協議した結果、当該化合物の晶析を成功させるには、特定のノウハウが必要との結論に達しましたが、かつてC社さまの製造を委託していたメーカーはすでに廃業しており、ノウハウ情報の入手は不可能であることが明らかになりました。
そこで当社では、独自に実験を重ね、下記のような経緯を経てノウハウを見いだし、準安定型結晶の獲得に成功しました。
検討の過程
- 今回の目的物では、種結晶の中に極微量の安定形結晶が含まれていたことが原因で、晶析で安定形結晶が発現していたことを解明
- 最適な種結晶品質や添加タイミングを模索。安定系結晶の析出しない領域を求めて処方の確度を向上
結晶多形制御における当社の知見を活用し、さまざまな結晶形状を作り出した例
課題に対する成果
これらの結果、準安定型結晶の取得に成功。目標品質の製品を安定して製造可能となり、C社さまでは事業計画を滞りなく推進することができました。
ひと味違う!富士フイルム和光純薬の受託製造・受託合成
学会から第一線の研究者を招聘して勉強会を開いたり、技術者が研究機関の研修に参加するなど、晶析の原理と方法論に関する情報蓄積に恒常的に取り組んでいます。また、富士フイルムグループの幅広い事業を通じて、さまざまな製品分野における晶析プロセスの検討実績を豊富に蓄積。QCD(品質・コスト・納期)の改善を視野に、問題解決のための最適策を総合的に検討・提案できます。
C社さま事業課題への成果
- 結晶多形の制御に必要なノウハウを解明、目的別の取得に成功
- お客様の事業戦略を支える製品計画の遂行をサポート