アゾ重合開始剤は熱及び光により分解し、フリーラジカルを発生するアゾ基(R-N=N-R)を持った化合物です。発生するフリーラジカルが反応性に富んでいるため、各種ビニル系モノマーの重合や有機化合物のハロゲン化反応などに使用されております。

アゾ重合開始剤について

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする連鎖反応であり、主にアゾ化合物や過酸化物が開始剤として使用されています。アゾ重合開始剤は熱及び光により分解し、フリーラジカルを発生するアゾ基(R-N=N-R)を持った化合物です。この反応性に富んだフリーラジカルを利用し、各種ビニル系モノマーの重合や有機化合物のハロゲン化反応などに使用されております。

アゾ重合開始剤の特徴

ラジカル重合でよく使用される過酸化物と比較して、アゾ重合開始剤には以下のような特徴があります。

・一次反応で分解する
・誘発分解しない(金属接触などで分解しない)
・分解時に溶媒の影響を受けない
・炭素ラジカルを生成する(穏和な反応性を示す)

ラジカルの発生機構

・アゾ重合開始剤が熱または光で分解し、窒素ガスと炭素ラジカルを発生する(1)。
(溶液での分解は一次反応速度式に従い、分解温度(分解活性)は開始剤の構造によって異なる)
・炭素ラジカルがビニルモノマーと付加反応(付加重合)し、ポリマーを生成する(2)。
・(ポリマー末端にアゾ開始剤が導入されるので、末端基の効果が期待される)
・一般的なアゾ重合開始剤の開始剤効率は0.5~0.7程度であり、残りは再結合(3)や不均化(4)を起こす。

重合開始剤の選定

使用する重合開始剤は、重合の手法や反応の温度によって異なります。ここでは、主な重合手法である「塊状重合」「溶液重合」「乳化重合」「懸濁重合」のそれぞれにおいて、使用する重合開始剤の一般的な選定方法をご紹介します。各重合手法における選定方法は以下の通りです。

塊状重合:モノマーに可溶な開始剤を使用するため、油溶性タイプ、水溶性タイプどちらも可
溶液重合:モノマー及び溶媒に可溶な開始剤を使用するため、油溶性タイプ、水溶性タイプどちらも可
乳化重合:水に可溶でモノマーに不溶な開始剤を使用するため、水溶性タイプから選択
懸濁重合:モノマーに可溶で水に不溶な開始剤を使用するため、油溶性タイプから選択

油溶性 水溶性 種類 一般構造式
V-70V-65AIBN
V-59V-40
V-501 アゾニトリル
V-601 アゾエステル
VAm-110 VA-086 アゾアミド
 –

V-50
VA-057

アゾアミジン
 – VA-044
VA-061
アゾイミダゾリン

10時間半減期温度
溶液中において、10時間でアゾ基の濃度が半分になる温度が「10時間半減期温度」です。重合温度に適する開始剤を選定する際、この「10時間半減期温度」を参考にします。弊社の製品を10時間半減期温度の高い順に並べると、下記のようになります。

油溶性と水溶性に分けた各種開始剤の10時間半減期温度

当社は、様々な油溶性アゾ重合開始剤と水溶性アゾ重合開始剤を取り揃えております。 各製品の物性などをご確認したい方は、下記より詳細ページをご覧ください。

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アゾ重合開始剤の残存率計算ツールのイメージ