FOM-03006
反応性に優れたアクリルアミド基を複数含有した富士フイルム独自の新規モノマーです。高い硬化性、水溶性、安定性、安全性を兼ね備え、既存モノマーには無い特長を有しています。
| 化学名 | N,N'-{[(2-acrylamido-2-[(3-acrylamidopropoxy)methyl]propane-1,3-diyl)bis(oxy)]bis(propane-1,3-diyl)}diacrylamide |
|---|---|
| CAS RN® | 1393329-90-2 |
物性
| 外 観 | 白色固体 |
|---|---|
| 融 点 | 107℃ |
| 易溶剤 | 水、メタノール |
| 保存条件 | 直射日光を避け、冷凍庫(-20℃)に密閉して保管してください |
特徴
1. 水溶性が高い
- 水に対して高い溶解性を示します。メタノールやエタノール等の親水性溶媒にも容易に溶けます。
各種溶媒への溶解性
| 溶媒名 | SP値 | 各固形分濃度(重量%)での溶解性 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.1 | 0.5 | 1 | 10 | 20 | 30 | 40 | 50 | ||
| n-ヘキサン | 7.3 | × | - | - | - | - | - | - | - |
| トルエン | 8.8 | × | - | - | - | - | - | - | - |
| 酢酸エチル | 9.0 | × | - | - | - | - | - | - | - |
| メチルエチルケトン | 9.3 | ◯ | × | - | - | - | - | - | - |
| アセトン | 10.0 | ◯ | ◯ | × | - | - | - | - | - |
| イソプロピルアルコール | 11.5 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
| アセトニトリル | 11.9 | ◯ | ◯ | × | - | - | - | - | - |
| エタノール | 12.7 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ |
| メタノール | 14.5 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ |
| 水 | 23.4 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
※モノマーのSP値12.8 ※液温30℃で測定 ※◎:易溶 ○:可溶 △:経時で結晶析出(過飽和) ×:不溶 -:未測定
2. 耐加水分解性に優れている
酸性~塩基性水溶液中での耐加水分解性に優れています。
FOM-03006の水溶液中での安定性を評価しました(45℃、2週間)。比較化合物に市販の2官能アクリルアミドTM-1、EO変性4官能アクリレートTM-2を用いております。
3. 硬化性が高い
- 市販の4官能アクリレート TM-0と比較し、酸素による重合阻害を受けにくく、高い重合性を示します。

4. 安全性に優れている
- 従来のアクリルアミドにはない高い安全性を有しています。
FOM-03006の安全性試験結果
用途
各種材料へのコーティング剤
例:フィルム、膜、医療用器具・材料、光学材料、記録材料
各種硬化性組成物の架橋剤
例:フィルム、膜、医療用器具、電子材料、印刷版材料
水系硬化材料
例:親水性の膜、吸水性ゲルの架橋剤、水性インクの架橋剤
医療用材料
例:ナノコンポジットゲル、環動ゲル、生体分子応答性ゲル、DDS用刺激応答ゲルなどの架橋剤
硬化例
硬化例1.ラジカル重合を用いた例

※映像は塗布状況を見やすくするため、シアン顔料を加えています。

硬化例2.マイケル付加反応を用いた例

使用例
使用例1.
- 親水性の高い機能性コートを作成することができます。
- モノマーや開始剤の水溶性が高いため、水を溶剤としてコート液を作成することができます。

コートAの組成例
| 原料名 | 配合割合(wt%) |
|---|---|
| 水溶性架橋剤(FOM-03006) | 30 |
| 水溶性モノマー(FOM-03010) | 67 |
| 水溶性光ラジカル開始剤(FOM-03011) | 3 |
| メタノール | 400 |
コートAの使用例と物性
- ・PET基板に塗布、乾燥後(50℃/5分)、光硬化(3J/cm2)
- ※使用ランプ:高圧水銀灯(露光量はUV-Aで管理)
| 評価膜 | 水接触角(°) |
|---|---|
| PET単独 | 75 |
| コートA | 35 |
| コートAを水に含侵後、乾燥 | 44 |
- 水との親和性を示す、水接触角によるぬれ性評価においてコートAは接触角が低く高い親水性を示し、水含侵後に再乾燥しても親水性を維持します。
使用例2.
- 市販の多官能アクリルモノマーをFOM-03006に置き換えることで硬化収縮の小さいカールしにくいコーティング膜を作成することができます。
コート液の組成
| コートB | コートC | ||
|---|---|---|---|
| 水溶性架橋剤 (FOM-03006) |
50wt% | 市販多官能アクリルモノマー | 50wt% |
| 単官能メタクリルモノマー (HEMA) |
47wt% | 単官能メタクリルモノマー (HEMA) |
47wt% |
| 水溶性光ラジカル開始剤 (FOM-03011) |
3wt% | 開始剤 (FOM-03011) |
3wt% |
硬化後のコーティングの様子