高性能重合禁止剤のメカニズムと効果
重合禁止メカニズム(推定)
Q-1300、Q-1301の場合
系内のラジカルをニトロソ基が捕捉して、上図(1)が生成します。
(1)はモノマーを攻撃し、成長ラジカルと反応して安定なカップリング生成物(2)を形成します。カップリング生成物(2)のN-N開裂は、50℃以上で進行し、(3)となります。
(3)は、更に2つのラジカルと反応して(4)となります。
ベンゾキノンの場合1)
ニトロソ化合物の場合2)
重合禁止効果の比較
- 精製スチレン
- 重合禁止剤濃度 1,000ppm
- 加熱温度 120℃
- 窒素気流下
⇒ Q-1300,Q-1301は、高温下でも他の重合禁止剤に比べて強力な重合禁止効果を発揮します。
用途例
- 保存安定剤(モノマー、UVインキ、UV塗料、感光性樹脂)
- モノマー蒸留時の重合防止
- モノマー、オリゴマー製造時及び加熱混合時の重合防止
- 異常重合時の重合停止
- 目標重合率達成時の重合停止
熱重合禁止効果
Q-1300およびQ-1301は熱重合において優れた禁止効果を示します。
1.アクリル酸3)
重合禁止剤存在下で一定時間加熱した溶液の相対粘度の変化から重合物生成の程度を比較測定した。
- 50%アクリル酸水溶液、重合禁止濃度:1,000 ppm/モノマー
- 加熱温度:100℃
- 加熱時間:8時間
- 窒素気流下
加熱前後のアクリル酸水溶液の相対粘度
重合禁止剤 | 相対粘度(30℃) |
---|---|
無添加、加熱前 | 1.77 |
ハイドロキノンモノメチルエーテル | 粘稠のため測定不能 |
Q-1300 | 1.77 |
2.多官能ビニルモノマー4)
多官能ビニルモノマー組成物の熱安定性を測定した。
モノマー組成
60部 | |
ジビニルベンゼン | 20部 |
クロロスチレン(o-/p-=65/35) | 20部 |
- 加熱温度:70℃
熱安定性の比較
重合禁止剤 | 添加量(ppm) | 結 果 |
---|---|---|
なし | - | 3時間経過後、粘度上昇とゲル化 |
ハイドロキノンモノメチルエーテル | 500 | 5時間経過後、粘度上昇 |
Q-1301 | 5 | 15時間経過後も粘度上昇、ゲル化なし |
蒸留(加熱+減圧)における重合禁止効果
Q-1300およびQ-1301は蒸留(加熱+減圧)において優れた禁止効果を示します。
1.アクリル酸5)
アクリル酸の蒸留精製に使用した際の効果を測定した。
- アクリル酸:1 L
- 蒸留温度:103℃/20 kPa
重合禁止効果の比較
重合禁止剤 | 添加量(ppm) | 結 果 |
---|---|---|
酢酸マンガン ハイドロキノンモノメチルエーテル |
500 200 |
3約300 ml留出後容器及び 蒸留塔内に重合物発生 |
酢酸マンガン Q-1300 |
20 20 |
重合物の発生は見られなかった |
2.ジメチルアミノエチルメタクリレート6)
エステル交換反応でジメチルアミノエチルメタクリレートを製造する際及びその後蒸留により、分離精製する際の重合禁止剤の効果を測定した。
【エステル交換反応】
- メタクリル酸メチル:750 g
(7.5 mol) - ジメチルアミノエタノール:268 g
(3.0 mol) - Pb:12.4 g(0.06 mol)
- 反応温度:65~70℃
- 反応時間:4.5時間
【蒸留精製】
- 留出温度:72℃/2.4 kPa~63.5℃/0.7 kPa
- アクリル酸:1 L
- 蒸留温度:103℃/20 kPa
エステル交換反応における禁止効果の比較
重合禁止剤 | 添加量(g) | 収率(%) | 残渣(g) | 備考 |
---|---|---|---|---|
ハイドロキノンモノメチルエーテル | 3.0 | - | - | 反応中に重合 |
Q-1300 | 2.3 | 91.5 | 13.2 |
ラジカル重合禁止効果
1.塩化ビニル
塩化ビニルを重合中、撹拌・冷却を停止し、重合禁止剤を添加した後の系内における温度の時間的変化を測定した。
- 塩化ビニル:水=1:1.2、PVA 0.08%
- ラジカル重合開始剤 V-65(0.03%)
- 重合温度 56.5℃
- Q-1300 100 ppm
- 5時間重合後、系内の撹拌・冷却を止め1分後に重合禁止剤を添加します。
⇒ Q-1300は懸濁重合において高い禁止効果を有する。
ラジカル重合の誘導期の測定
1.アクリル酸ナトリウム
アクリル酸ナトリウムの水溶液重合における重合禁止剤の禁止効果を評価した。
- モノマー濃度 20%(w/v)
- 重合禁止剤 2,000 ppm/モノマー
- 水溶液ラジカル重合開始剤 V-50(0.4%/モノマー)
- 重合温度 50℃
2.アクリルアミド
アクリルアミドの水溶液重合における重合禁止剤の禁止効果を評価した。
- モノマー濃度 50%(w/v)
- 重合禁止剤 2,000 ppm/モノマー
- 水溶液ラジカル重合開始剤 V-50(1.0%/モノマー)
- 重合温度 50℃
⇒ Q-1300は他の重合禁止剤と比較して誘導期が長く、高い禁止効果を有する。
異常重合時の成長抑制効果
ポップコーンポリマー※の成長を抑制し、他の禁止剤と比較し高い禁止効果を示します。
※ポップコーンポリマー
蒸留時にモノマーが3次元的に架橋してできる溶解性、融解性共に低いポリマーの総称
1.グリシジルメタクリレート7)
グリシジルメタクリレート重合系内に重合禁止剤を存在させ、ポップコーンポリマーの成長を比較した。
- グリシジルメタクリレート 30部、アクリル酸メチル 20部、水 1,500部
- 重合禁止剤 1,000 ppm/モノマー、重合温度 35℃、重合時間 10時間
- 重合開始剤としてAPS-Na2 SO3 の水系レドックス重合
異常重合の禁止効果
禁止剤 | 重合収率 | ポリマー比粘度 | 備考 |
---|---|---|---|
なし | 87.3 | 0.124 | ポップコーンモノマー2.7部生成 |
Q-1300 | 92.7 | 0.122 | ポップコーンポリマーなし |
2.アクリル酸8)
アクリル酸の還流条件下の気相にポップコーンポリマーの核(SBR)を配置し、そのポップコーンポリマーの質量変化を測定した。
- 減圧下(6.7 kPa)還流、反応時間 6時間
異常重合の禁止効果
禁止剤 | 添加量(ppm) | ポップコーン核の質量変化(%) |
---|---|---|
なし | 126 | +636 |
Q-1300 | 102 | 0.0 |
3.メタクリル酸メチル8)
メタクリル酸メチルの還流条件下の気相にポップコーンポリマーの核(SBR)を配置し、そのポップコーンポリマーの質量変化を測定した。
- 減圧下(6.7 kPa)還流、反応時間 6時間
- 禁止剤を6部に分け、1時間ごとに添加。
異常重合の禁止効果
禁止剤 | 添加量(ppm) | ポップコーン核の質量変化(%) |
---|---|---|
フェノチアジン | Q-1300と同モル量 | +237 |
ハイドロキノン | Q-1300と同モル量 | +243 |
Q-1300 | 100 | +18 |
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