高分子材料のイメージ画像

高分子関連材料

高性能重合禁止剤とは

重合禁止メカニズム(推定)

Q-1300、Q-1301の場合

高性能重合禁止剤の重合禁止メカニズム(推定)

系内のラジカルをニトロソ基が補足して、(1)が生成します。
(1)はモノマーへ攻撃し、成長ラジカルと反応して安定なカップリング生成物(2)を形成します。カップリング生成物(2)のN-N開裂は、50℃以上で進行し、(3)となります。
(3)は、更に2つのラジカルと反応して(4)となります。

ベンゾキノンの場合1)

ベンゾキノンの重合禁止メカニズム
1) J.C. Bevington, N.A. Ghanen, H.W. Melville, Trans. Faraday Soc. 51 346(1995) ; J. Chem.Soc. 1955 2822

ニトロソ化合物の場合2)

ニトロソベンゼンの重合禁止メカニズム
2) Polymer Bulletin 33,325-329(1980)

重合禁止効果の比較

測定条件
  • 精製スチレン
  • 重合禁止剤濃度 1,000ppm
  • 加熱温度 120℃
  • 窒素気流下
Q-1300、Q-1301を使用した場合、他の重合禁止剤を使用した場合に比べて残存モノマー率が高いグラフ

⇒ Q-1300,Q-1301は、高温下でも他の重合禁止剤に比べて強力な重合禁止効果を発揮します。

用途例

  • 保存安定剤(モノマー、UVインキ、UV塗料、感光性樹脂)
  • モノマー蒸留時の重合防止
  • モノマー、オリゴマー製造時及び加熱混合時の重合防止
  • 異常重合時の重合停止
  • 目標重合率達成時の重合停止

熱重合禁止効果

Q-1300およびQ-1301は熱重合において優れた禁止効果を示します。

1.アクリル酸3)

重合禁止剤存在下で一定時間加熱した溶液の相対粘度の変化から重合物生成の程度を比較測定した。

測定条件
  • 50%アクリル酸水溶液、重合禁止濃度:1,000 ppm/モノマー
  • 加熱温度:100℃
  • 加熱時間:8時間
  • 窒素気流下

加熱前後のアクリル酸水溶液の相対粘度

重合禁止剤 相対粘度(30℃)
無添加、加熱前 1.77
ハイドロキノンモノメチルエーテル 粘稠のため測定不能
Q-1300 1.77
3) 特公昭 39-220 日東理化学工業

2.多官能ビニルモノマー4)

多官能ビニルモノマー組成物の熱安定性を測定した。

モノマー組成

2-Propenoic acid, 2-methyl-, 1,1′-[(1-methylethylidene)bis[(2,6-dibromo-4,1-phenylene)oxy-2,1-ethanediyl]] ester CAS RN:67006-39-7 60部
ジビニルベンゼン 20部
クロロスチレン(o-/p-=65/35) 20部
測定条件
  • 加熱温度:70℃

熱安定性の比較

重合禁止剤 添加量(ppm) 結 果
なし - 3時間経過後、粘度上昇とゲル化
ハイドロキノンモノメチルエーテル 500 5時間経過後、粘度上昇
Q-1301 5 15時間経過後も粘度上昇、ゲル化なし
4) 特開昭 63-170401 東レ

蒸留(加熱+減圧)における重合禁止効果

Q-1300およびQ-1301は蒸留(加熱+減圧)において優れた禁止効果を示します。

1.アクリル酸5)

アクリル酸の蒸留精製に使用した際の効果を測定した。

測定条件
  • アクリル酸:1 L
  • 蒸留温度:103℃/20 kPa

重合禁止効果の比較

重合禁止剤 添加量(ppm) 結 果
酢酸マンガン
ハイドロキノンモノメチルエーテル
500
200
3約300 ml留出後容器及び
蒸留塔内に重合物発生
酢酸マンガン
Q-1300
20
20
重合物の発生は見られなかった
5) 欧州特許 301879(1989) Hoechst Celanese

2.ジメチルアミノエチルメタクリレート6)

エステル交換反応でジメチルアミノエチルメタクリレートを製造する際及びその後蒸留により、分離精製する際の重合禁止剤の効果を測定した。

測定条件

【エステル交換反応】

  • メタクリル酸メチル:750 g
    (7.5 mol)
  • ジメチルアミノエタノール:268 g
    (3.0 mol)
  • Pb:12.4 g(0.06 mol)
  • 反応温度:65~70℃
  • 反応時間:4.5時間

【蒸留精製】

  • 留出温度:72℃/2.4 kPa~63.5℃/0.7 kPa
  • アクリル酸:1 L
  • 蒸留温度:103℃/20 kPa

エステル交換反応における禁止効果の比較

重合禁止剤 添加量(g) 収率(%) 残渣(g) 備考
ハイドロキノンモノメチルエーテル 3.0 - - 反応中に重合
Q-1300 2.3 91.5 13.2
6) 特開昭 52-153912 日東化学工業

ラジカル重合禁止効果

1.塩化ビニル

塩化ビニルを重合中、撹拌・冷却を停止し、重合禁止剤を添加した後の系内における温度の時間的変化を測定した。

測定条件
  • 塩化ビニル:水=1:1.2、PVA 0.08%
  • ラジカル重合開始剤 V-65(0.03%)
  • 重合温度 56.5℃
  • Q-1300 100 ppm
  • 5時間重合後、系内の撹拌・冷却を止め1分後に重合禁止剤を添加します。
Q-1300の重合禁止効果を示すグラフ

⇒  Q-1300は懸濁重合において高い禁止効果を有する。

ラジカル重合の誘導期の測定

1.アクリル酸ナトリウム

アクリル酸ナトリウムの水溶液重合における重合禁止剤の禁止効果を評価した。

測定条件
  • モノマー濃度 20%(w/v)
  • 重合禁止剤 2,000 ppm/モノマー
  • 水溶液ラジカル重合開始剤 V-50(0.4%/モノマー)
  • 重合温度 50℃
アクリル酸ナトリウムの水系重合におけるQ-1300の誘導期と阻害効果を示すグラフ。

2.アクリルアミド

アクリルアミドの水溶液重合における重合禁止剤の禁止効果を評価した。

測定条件
  • モノマー濃度 50%(w/v)
  • 重合禁止剤 2,000 ppm/モノマー
  • 水溶液ラジカル重合開始剤 V-50(1.0%/モノマー)
  • 重合温度 50℃
アクリルアミドの水溶液重合におけるQ-1300の誘導期と阻害効果を示すグラフ。

⇒  Q-1300は他の重合禁止剤と比較して誘導期が長く、高い禁止効果を有する。

異常重合時の成長抑制効果

ポップコーンポリマー※の成長を抑制し、他の禁止剤と比較し高い禁止効果を示します。

※ポップコーンポリマー
蒸留時にモノマーが3次元的に架橋してできる溶解性、融解性共に低いポリマーの総称

1.グリシジルメタクリレート7)

グリシジルメタクリレート重合系内に重合禁止剤を存在させ、ポップコーンポリマーの成長を比較した。

測定条件
  • グリシジルメタクリレート 30部、アクリル酸メチル 20部、水 1,500部
  • 重合禁止剤 1,000 ppm/モノマー、重合温度 35℃、重合時間 10時間
  • 重合開始剤としてAPS-Na2 SO3 の水系レドックス重合

異常重合の禁止効果

禁止剤 重合収率 ポリマー比粘度 備考
なし 87.3 0.124 ポップコーンモノマー2.7部生成
Q-1300 92.7 0.122 ポップコーンポリマーなし
7) 特公昭 48-2934 鐘淵化学工業

2.アクリル酸8)

アクリル酸の還流条件下の気相にポップコーンポリマーの核(SBR)を配置し、そのポップコーンポリマーの質量変化を測定した。

測定条件
  • 減圧下(6.7 kPa)還流、反応時間 6時間

異常重合の禁止効果

禁止剤 添加量(ppm) ポップコーン核の質量変化(%)
なし 126 +636
Q-1300 102 0.0
8) USP 4772740(1988) Mallinckrodt

3.メタクリル酸メチル8)

メタクリル酸メチルの還流条件下の気相にポップコーンポリマーの核(SBR)を配置し、そのポップコーンポリマーの質量変化を測定した。

測定条件
  • 減圧下(6.7 kPa)還流、反応時間 6時間
  • 禁止剤を6部に分け、1時間ごとに添加。

異常重合の禁止効果

禁止剤 添加量(ppm) ポップコーン核の質量変化(%)
フェノチアジン Q-1300と同モル量 +237
ハイドロキノン Q-1300と同モル量 +243
Q-1300 100 +18
8) USP 4772740(1988) Mallinckrodt